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2022/08/30

社員の健康診断

健康診断の受診拒否をする社員への対応

 会社は常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断(定期健康診断)を実施しなければなりません(労働安全衛生規則第44条)。また、深夜などの特定業務に従事する労働者に対し、その業務への配置換え時および6か月ごと以内に1回、定期的に実施する必要があります。
 定期健康診断の対象となる「常時使用する労働者」とは、正社員はもとより、パートタイマー・アルイバイトであっても1年以上雇用される予定の者で、かつ、週の所定労働時間数が正社員と同様の業務に従事する4分の3以上の者をいいます。したがって、例えば、正社員の週所定労働時間が法定労働時間の40時間であれば、1年以上雇用見込みまたは1年以上雇用され、週30時間以上勤務するパートタイマー・アルイバイトであれば受診させなければならなりません。単にパートタイマー・アルイバイトだかといって受診対象から除外してしまうと労働安全衛生法違反となります。
 
 次に受診を拒否する労働者に定期健康診断の受診を強要できるかです。労働安全衛生法で事業主に対する定期健康診断の受診を義務付けているのは、労働者が従事する仕事や作業によって引き起こされる事故や疾病を防ぎ、またはそれを早期発見し、被害の拡大を防止するためでもあります。また、定期健康診断等の結果に基づき、必要があると認められる場合は、当該労働者の健康状態の実情を考慮して就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずるなどの対応も必要となります。さらに健康診断の結果、異常の所見があった場合に精密検査などの受診勧奨などをしなければなりません。
 一方、労働者には、会社が労働安全衛生法に基づき実施する健康診断を受診する義務があります。ただし、必ずしも会社の指定した医師、病院等の健診機関で受診する必要はありません。健康診断を受ける医療機関等は自分で選ぶことができます。その場合は、受診結果を証明する書面を会社に提出しなければならないことになります。会社は会社が実施する健康診断の受診命令に従わない労働者に対して懲戒処分をもって対処することもできます。
 しかし、懲戒処分は健全な労使関係を確保するために避けることが望ましいので、受診の督促をするとともに、受診を拒否する労働者にその理由を聴取するなどして受信拒否の状況を把握することが大切です。そのうえで受診するメリットを十分説明することです。また、就業規則に「労働者は、正当な理由なく会社が実施する健康診断の受診を拒否した場合、懲戒処分に処することがある」などと定期健康診断の受診義務を定め、業務命令としての健康診断の受診を拒否する場合は、業務命令違反として懲戒処分の対象となることを定めておくことです。それによって受信拒否の労働者に対して懲戒処分も可能となります。
 まお、事業者は定期健康診断等の結果、異常の所見があると診断された労働者について、就業上の措置について、3か月以内に医師又は歯科医師の意見を聞く必要があります。また事業者は、。上記の医師等の意見を勘案し必要がある場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません。