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2020/07/27

短時間労働者の厚生年金の適用拡大

2020年5月29日、第201回通常国会において、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、6月5日に公布されました。

 今回の年金制度改正の大きなポイントは、①短時間労働者への適用拡大、②年金の繰り下げ受給年齢の選択範囲の拡充、③在職老齢年金の見直しです。その他には確定拠出年金(iDeCo)の加入要件の見直しなどがあります。今回は①についてまとめることにします。


 ●被保険者(厚生年金保険、健康保険)の適用拡大(施行:2022年10月、2024年10月) 

 厚生年金保険は、その適用事業所に常時雇用される70歳未満で、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働時間が同じ事業所で働く正社員の4分の3以上である者は、法律上、強制加入となります。

 ただし、、この基準を満たさないパート等の短時間労働者であっても、厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の適用事業所に使用される者で、①1週間の所定労働時間が20時間以上でること、②1年以上の雇用の見込みがあること、③賃金月額が8万8000円以上(残業代や一時金などは含まない)であることの3つの条件を満たす者(学生を除く)は被保険者となります。

 今回の改正では、パート等の短時間労働者であっても被保険者となる適用事業所の規模が見直され、2022年10月1日からは被保険者数が常時100人を超える事業所、2024年10月1日からは常時50人を超える事業所へと拡大されることになりました。また、雇用期間についても、前述②の「1年以上の雇用の見込み」から「2か月超の雇用の見込み」に短縮されます。なお、①の労働時間要件および③の賃金要件は現行のままです。

 厚生年金保険および健康保険、介護保険の保険料は事業主と被保険者の折半負担です。今回の改正による適用拡大でパート等の短時間労働者を雇用する中小事業主にとっては、さらに保険料の負担が増えることになります。

 また、これまで厚生年金の強制加入適用事業所となるのは、法人経営の事業所と、個人経営でも従業員が常時5人以上いる事業所(農林漁業やサービス業等を除く)でしたが、新たに弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の士業事務所で常時5人以上使用している場合は適用事業所となります。