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2025/03/24

うつ病で休職・復職を繰り返す従業員の解雇の可否

休職と復職を繰り返すことが予測される場合、解雇は問題あるのか

うつ病で休職・復職を繰り返す従業員の解雇の可否

休職と復職を繰り返すことが予測される場合、解雇は問題あるのか

 従業員が、精神疾患等により休職と復職を繰り返す場合があります。このような従業員がいると、休職期間中の従業員の仕事を補っている周囲の従業員にとっても負担となることがあります。 休職制度は、私傷病により従業員が労務に従事できない場合に、会社との労働契約を継続させたまま労務提供を免除するものです。この休職制度は必ずしも法律に基づくものではなく、当該制度を設けるか否かは会社の判断によります。 
 本来、従業員が私的な事由を原因としてメンタル不調等で労務提供が出来なければ、労務契約上の債務不履行となります。就業規則等に解雇事由として「身体の障害により業務に耐えられない場合」旨の規定があれば、解雇することも可能です。ただし、解雇については、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を濫用したものとして無効とされます(労働契約法第16条) 。
 そこで、多くの会社では、就業規則等に傷病による休職制度を設けています。休職期間内に回復し労務の提供が可能になれば、休職を終了して復職可能とし、回復せずに休職期間満了となれば、解雇または自然退職とするなど、労働契約終了までの一定の猶予期間としています。うつ病等の精神疾患を理由とする休職の場合は、復職したものの再発して再休職となることが多いのが実情です。しかし、休職・復職を繰り返す場合であっても、労務提供の可能性を勘案し、解雇等の判断は慎重に行う必要があります。 
 そこで、まず就業規則にどのように定めているかの確認をする必要があります。例えば、「私傷病による休職期間は6カ月とする。ただし、休職期間満了前に復職し、その後3カ月以内に同一または類似の傷病等で休職した場合は前後休職期間を通算し、当該通算期間の満了によって自然退職とする」というようの定めていたとします。 この場合は、休職・復職を繰り返したとしても規定の範囲内であれば、休職期間が通算6カ月に達するまでは退職させることはできません。仮に解雇するにしても、残りの休職期間を適用しても回復の見込みが認められない、とならない限りは解雇権の濫用として解雇無効となる可能性が高くなります。 
 裁判例でも、再度の休職が可能であったにもかかわらず、主治医の意見を聞かずになされた躁うつ病の再発を理由とする解雇が無効とされたケースがあります(K社事件:東京地裁平成17年2月18日判決)。 本事件は、躁うつ病で休職していた従業員が一旦復職したものの、復職後の欠勤が目立ち、症状が再発したため、会社は当該労働者を「精神または身体の障害もしくは病弱のため、業務の遂行に甚だしく支障があるときと認められたとき」等の就業規則上の解雇事由により解雇したものです。しかし、就業規則上、同一理由による再度の休職も予定され、休職期間は最大2年とされていました。 
 判決は、解雇の先立ち会社が原告主治医に助言を求めた形跡がないことや、就業規則上再度の休職も可能であり、再休職を検討することが相当であること、会社は原告のほかに病気で通常勤務できない者2名の雇用を継続しており、原告のみ解雇することは平等取り扱いに反することも解雇権濫用であるとしています。
 休職について、通算規定や回数の限度を定めていない会社も多くあります。この場合、与えられた休職期間を超えない限り、回数を問わず休職できることになります。