法改正などの最新情報

2025/05/19

社内結婚を理由として異動命令の可否について

同部署に結婚した二人を置くことを避けるため異動を命じることは可能か

社内結婚を理由として異動命令の可否について

同部署に結婚した二人を置くことを避けるため異動を命じることは可能か

 社内結婚で夫婦が同じ部署にいると、周囲の気遣いや、本人たちの公私混同により支障が出ることなどを懸念して、いずれか一方に異動を命ずることはよくあります。しかし、明らかに「結婚」を理由とする人事異動に関しては、男女雇用機会均等法(略称)に照らしても問題があります。
 同法第6条では、労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)について、労働者の性別を理由として、差別的取り扱いをしてはならないと定められています(第1号)。具体的には、主として次のような場合が差別的取り扱いに該当します。

① 一定の職務への配置にあたって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
② 一定の職務への配置にあたっての条件を男女で異なるものとすること(例えば、女性だけ、婚姻したこと、子どもを有していることなどを理由に職務への配置の対象から排除することなど)。
③ 一定の職務への配置にあたり、能力および資質の有無などを判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること。
④ 一定の職務への配置にあたり、男女のいずれかを優先すること。
⑤ 配置における権限の付与にあたり、男女で異なる取り扱いをすること。
⑥ 配置転換にあたって、男女で異なる取り扱いをすること(例えば、出向を女性のみに限定したり、女性のみ婚姻や子どもを有しているこ
とを理由に、通勤が不便な事業所に配置したりすることなど)。 

 以上のことから、結婚を理由として女性のみに退職を強要したり、不利益な配置転換をすることは禁止されています。また厚生労働省が公表している「均等法Q&A」では、「職場結婚を理由に一方の性にのみ退職勧奨や配置転換を行うなど、配置等について男女で異なるものとすることは、均等法に違反します」としています。したがって、仮に今回の異動がこれまでの習慣通りであったとしても「結婚」のみを理由とするものであれば、本人の同意がない限り男女雇用機会均等法違反となります。
 では、不利益な配置転換(人事異動)となるのはどのような場合かということになりますが、原則として、職務限定(経理のみなど)で採用した者でない限り、会社は人事権を有しており、広く配置転換を命ずることができます。会社が有効に配置転換を命ずるには、配置転換に関する事項を就業規則などに定めておく必要があります。配置転換に関する定め合理的なものであれば、就業規則の内容が労働契約の一部となり、会社は本人の同意を得ずとも、配置転換を命ずることができ、労働者はそれを正当な理由なく拒むことはできません。
 ただし、就業規則に配置・転勤条項の定めがあっても、個別具体的な配置転換命令が、権利濫用に該当すると判断される場合には、その配置転換命令が無効となる可能性があります。具体的には、①業務上の必要性がないもの、②不当な動機・目的によるもの、③労働者に著しい不利益が生じるもののいずれかに該当する場合には、人事権の濫用を問われて違法となり、配置転換が無効となる可能性があります。違法な配置転換を行った場合には、労働者から配置転換の無効を主張されることもあり、その主張が裁判等で認められた場合には、当該労働者を元の職種・場所で就業させなければなりません。男女雇用機会均等法に照らし慎重な判断をすべきです。