賃金不払残業の是正結果と改善策 是正での支払が年間約100億円!
厚生労働省はこのほど、平成27年度における賃金不払残業の係る是正結果をまとめました。
全国の労働基準監督署が1年間に賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、不払の割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった企業数は1,348社(前年比19企業増加)、支払われた割増賃金額の合計は99億9,423万円(同42億5,153万円減少)となりました。
支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり741万円、労働者1人当たり11万円で、1企業での最高支払額は1億3,739万円(金融業)となっています。
賃金不払残業の解消のための取組事例
事例1(業種:製造業)
<賃金不払残業の状況>
会社は、ICカードによる始業・終業時刻の入力と入退門記録により労働時間を管理していたが、多くの労働者に終業時刻と退門時刻の乖離があり、、最長では12時間の乖離が認められた。乖離の理由は「自己研修」や「本人都合による業務外の出社」などとされていたが、eメールの送受信記録から、虚偽の理由が申告されている疑いが認められた。
<労基署の指導内容>
割増賃金を適切に支払っていないことについて是正勧告を行った。また、労働時間について聴き取りを行うなど実態調査を行った上で、不足額を支払うこと、労働時間を適正に把握すること、時間外労働を削減することについて指導した。
<企業が実施した解消策>
労働時間確認書を提出させるなどの実態調査を行った結果、賃金不払残業が認められたことから、不払となっていた14カ月間の割増賃金を支払った。
また、①始業・終業時刻と入退門の時刻に30分以上の乖離が認められた場合に詳細な理由を申請させ、上司の承認を得ること、②休日出勤を行う場合は事前に申請させるとともに、休日の入退門による時間管理を実施、③正しく申告が行われているか現場の実態把握を行うため、人事責任者と労働者の面談を実施するなどの改善策を講じた。
事例2(業種:商業)
<賃金不払残業の状況>
会社はICカードにより始業・終業時刻を入力し労働時間を管理していたが、労基署が夜間に立入検査(夜間臨検)を行った結果、ICカードによる終業時刻の入力後に労働している実態が認められた。
さらに、パソコンのログ記録、eメールの送信記録、防犯カメラの記録などから、賃金不払残業の疑いが認められた。
<労基署の指導内容>
労働時間についての実態調査を行うよう指導し、その結果確認した賃金不払残業について是正を勧告した。また、賃金不払残業の原因分析と撲滅に向けた取組を行うよう指導した。
<企業が実施した解消策>
社内アンケート調査の結果、賃金不払残業が認められたことから、不払となっていた8カ月間の割増賃金を支払った。
また、①代表取締役による「賃金不払残業の撲滅宣言」を行うことにより、意識・風土の改善を図る
こと、②ICカードの始業・終業時刻を見える化し、責任者が随時確認できるようシステムを改修することとともに、複数人でチェックする体制を確立、③所定労働時間内に業務を終了できるよう業務の内容・人員の見直し(欠員部署に対する配置転換、パート労働者の活用)などの改善策を講じた。