届出が遅れた家族手当の支給を遡らなくてもよい?
扶養する家族がいる従業員に対して、届出により毎月一定額の家族手当を支給している会社の従業員が再婚し、3カ月過ぎてから届け出がありました。 家族手当を遡って支給する必要があるのでしょうか?
「賃金」としての家族手当の支払い義務
一般的に家族手当は就業規則や賃金規定で支給基準や金額を定めています。この場合、労働基準法においては、家族手当も労働の対象と位置づけられますので、支給基準を満たせば、使用者には支払い義務が生ずることになります。
家族手当の支給基準は、対象となる家族の続柄、同居・扶養の事実、さらに年齢の範囲などを定めることが考えられますが、支給(または金額の変更)の条件として、従業員本人が所定の届出をすることを定めておくこともできます。本人の届出を条件として定めていなければ、一般的には支給基準を満たせば当然に支払い義務が生ずることになります。
支給開始時期の問題
ところが、届出を条件としていたとしても、届出が相当程度遅れた場合に、基準を満たした日を起点として支給するのか、または、届出があった日を起点として支給するのか、明確にされていない場合には疑義が生じてしまいます。
就業規則などで扶養家族の異動の速やかな届出を義務づけているのであれば、届出が遅れたことで家族手当の支給も遅れるのは自己責任とする考え方もあるでしょう。
一方で、支給基準を満たせば当然に手当を受ける権利が発生していて、届出は単に請求をする行為に過ぎないという考え方もあります。なお、労働基準法(第115条)においては賃金に関する請求権は2年間の時効にかかると定められていますので、2年前までは遡って請求が可能であるとされています。
疑義を生じないために
いずれにしても、このようなケースでは簡単に結論が出せませんので、少なくともこのような疑義が生じないためには、就業規則などに、家族手当の取り扱いを支給の開始時期も含めて定めておくことが必要で、今後は届出が遅れないように注意を喚起することなども大切だと言えます。