出勤停止中の無給は問題になるか?
出勤停止とは、労働基準法には定めがありませんが、一般的には就業規則上の職務規律違反などに対する制裁として、対象となる労働者との労働契約を存続させながら、その就労を一定期間禁止することを言います。
就業規則に、出勤停止およびその期間中の賃金を支払わらないことが定めてある場合には、労働者がその出勤停止の処分を受けることになり、出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であるものと認められています。
しかし、その期間の長さについては「公序良俗」(民法第90条)の見地から、規律違反事案の情状の程度などにより制限があり、不当に長期になるものは認められないされています。
一方、減給の制裁については労働基準法(第91条)に定めがあり、「減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と、減額の幅には上限が設けられています。
減給は、対象となった労働者が実際に就労している場合に労務の対象として支払われる賃金に対して行われる制裁措置ですので、一定の制限があります。
しかし出勤停止は、労働者が就労せず、もともと労務の提供に対して支払うべき賃金が発生しないので、労基法の減給制裁の規程には関係ないものとされています。
憲法では二重処罰の禁止が定められています。これは、一度ある犯罪として処罰された行為を、さらに別の罪にも当たるとして処罰してはならない、という原則のことです。
企業内での制裁についても、この原則が成り立つという考え方から、同一の違反事案に対して、複数の制裁処分を行うことは認められません。したがって、減給をしたうえで、さらに出勤停止の処分を行うことがないように注意しなければなりません。
また、制裁の処分は社会通念上からも相当でなければならないとされています。初めて軽微な違反は「訓戒」などにとどめ、同じ違反を繰り返す場合になどに、再度の違反防止と強く反省を求めるため、減給、出勤停止などの制裁処分を課すなど、その適用に関しても就業規則で定めておくことが望ましいでしょう。