2021/12/18
入社後間もなく妊娠の報告があった社員の扱い
入社約3か月程度の社員から妊娠の報告あった場合、退職を求めることは出来るのか?
労働基準法では、産前の6週間(双子以上の妊娠の場合は14週間)は、妊娠中の女性労働者が請求をした場合、または出産後8週間は本人からの請求を問わず休暇を与えなければなりません(労基法第65条第1項、第2項)。
したがって、産前の休業は、本人からの請求がない場合、本人の体調しだいで出産直前まで働き続けることを認めることもできますが、産後8週間については本人の希望があっても、復職させることはできません。ただし、産後6週間経過後については、医師が認めた場合に限り、復職することが可能です。
また、育児・介護休業法に基づき、通常、産後8週間を経過した日から子が1歳に達するまでの育児休業の申し出があった場合には、育児休業を与えなければなりません。ただし、子が1歳になった時点でも継続して子供を養育していて、かつ、保育所に入所できていないなどの事情がある場合は1歳6か月まで、さらに1歳6か月の時点で同様の事情が認められた場合は2歳までと、それぞれ育児休業を延長することができます。
このように産前産後休暇、育児休業はいずれも法律上の制度であり、入社直後であることを理由に、会社は一方的に、これを拒否することはできません。女性労働者について産前産後の休業中と休業期間終了後30日間は原則として解雇することはできません(労基法第19条)。また男女雇用機会均等法では、結婚、妊娠、出産を理由に解雇その他不利益な取り扱いをすることは禁止されており、妊娠中および産後1年を経過していない女性労働者の解雇は無効となります。
ただし、従業員の過半数を代表するもの(過半数労働組合がある場合は当該労働組合)との労使協定において、雇用期間が1年未満の労働者は、育児休業の適用除外とする旨を締結している場合には、その申し出を拒否することができます。入社直後の妊娠、出産・育児に伴う休業が生じるようなことが見込まれる事態を回避するには、あらかじめ育児休業については適用除外となる労使協定を締結しておき、対象となり得る未婚・既婚の女性従業員などを採用する場合においては、事前に自社の出産・育児に関する制度を説明しておくべきでしょう。
ところで、2021年6月に育児介護休業法が改正されました。男女問わず仕事と育児と介護の両立を可能とするためにこれまでの制度の一部が改正され、2022年4月1日より段階的に施行されることになっています。その一つが、男性版産休・育休制度と言われる「出生時育児休業」です。この制度は、子供が生まれてから8週間以内に合計4週間(28日)まで、夫も育児休業を取得することができます。取得方法は合計28日を2回に分割しての取得が可能です。またこれとは別に、子が1歳に達するまでの間、夫が育児休業を2回に分割して取得することもできるようになります。「出生時育児休業」と併せて取得した場合には、最大4回に分けて育休取得が可能となります(2022年10月1日施行)。夫婦交代で育児休業をすることで、妻の職場復帰を早めることもできます。このように出産および子育ては女性のみという時代から夫婦で行う時代となりつつあります。労働者が減少する中で女性は貴重な戦力ですので、これを機会に両立が可能とする職場環境整備をすることも重要です。